青空に上げた花火
君が行ってしまうのが嫌で 僕には止めることができなくて
プラモデルを買う予定だったお金を持って花火を買いに行った
ロケット花火をひとつコーラの瓶に刺して
空飛ぶ飛行機に向けて放った
君が乗っている飛行機なのかなんて解らなかったけど
青空に上げた花火は君に届くことなく弾けた
落ちてきた燃えカスは僕の心みたい
拾わずに帰った
「何年後かのこの日必ず帰ってくるから」
君の言葉を信じて毎年この日に花火を上げていた
毎年ロケット花火をコーラの瓶に刺して
最初に花火を買ったお店はとっくに無くなっていたけど
青空に上げた花火は僕には見えない
でも君への合図にはなると思って
また今年も弾けた
今年も上げた花火は僕の目には見えない
破裂する音に耳を塞ぎたくなる
今年も拾わずに帰ろうと思った
コーラの瓶を持って立ち上がり後ろを向く
歩き出そうと思ったけど歩けなかった
振り返った先にいた女性
僕の記憶より大きくなった君
風に流された燃えカスを拾って
そっと微笑った
君と星空に上げた花火は星よりも輝いた
燃えカスは見えなかった
見えなくていいと思った
もう僕の心とは違うから